AI時代に求められる「モデルルームを現実に落とし込む」エンジニア
AIが理想的なコードを瞬時に生成する時代。しかしそれは家具屋のモデルルームのようなもの。現実世界に落とし込み、実際に動くシステムを作り上げるエンジニアの役割がより重要になっています。
エンジニアとして日々の開発に携わる中で、AIの進化がもたらす変化を肌で感じています。今回は、AI時代におけるエンジニアの役割について、私なりの考えをまとめてみました。
人間の営みとビジネスの関係
衣食住——人間が生きていくうえで必要なものは、自然とビジネスになり、やがて洗練されていきました。
それぞれの分野には「職人」と呼ばれる人々がいます。一方で、組織化・工業化・自動化が進み、特殊な知識がなくてもマニュアルに従えば多くの人が仕事に関われるようになりました。
しかし、表面上は誰でも真似できるように見えても、細部には長年の経験によって培われた最適解が詰まっています。その品質を支えているのは、やはり職人たちです。
プログラミングという「新しい領域」
プログラミングは、元々人間の生活圏には存在しませんでした。衣食住のように「必須」ではなかったのです。
しかし今やプログラミングは現代社会のインフラを支える存在となり、AIの登場によって大幅な自動化が進みました。
ここで私が気になるのは、細部がおろそかになってはいないかという点です。
従来の開発では、設計・要件定義から始まり、時間のかかるコーディング作業を人海戦術で進めていました。これは家を建てるプロセスに似ています。基礎から順序立てて積み上げていくものでした。
「モデルルーム」の誘惑
ところが、AIは猛烈なスピードで「それっぽいもの」を見せてくれます。
これは家具屋のモデルルームのようなものです。
華やかで便利そうで、一見すると理想的に見えます。しかし、そのまま自分の環境に落とし込めるかどうか、実際に使えるかどうかは、慎重な検討が必要です。
AIが生成したコードも同様です。見た目は美しく動いているように見えても、本番環境で運用できるか、セキュリティは担保されているか、保守性はあるか——こうした視点での検証が欠かせません。
元には戻れない、だからこそ
AIがここまで浸透した今、従来の順序による開発フローに戻ることは難しいでしょう。クライアントも、スピード感のあるアウトプットに慣れてしまいました。
だからこそ、AIが作った華やかで理想的に見えるモデルルームを、現実世界に落とし込むエンジニアが必要なのです。
各分野の職人が「これでOK」と判断を下すように、プログラミングの世界でも、細部を見極め、実運用に耐えうる品質を担保できる人材が求められています。
現場のエンジニアとして思うこと
私自身、AIを日常的に活用しています。生産性は確実に上がりました。
しかしAIが生成したコードを鵜呑みにしてはいけません。常に「このコードは本当に動くのか」「将来的に問題を起こさないか」という視点でレビューしています。
AIは強力なパートナーですが、最終的な責任を負うのは私たちエンジニアです。モデルルームを「住める家」に変える——それが、これからのエンジニアに求められる役割ではないでしょうか。